ミラーレス機時代に見直され始めた新しいユニバーサルマウント
こんにちは。オールドレンズユーザーのspiralです。今回はライカMマウントの合理的な活用法についてお話しします。
筆者が写真撮影に用いるカメラはソニーのフルサイズ機、フジフィルムのAPS-C機、オリンパスのマイクロフォーサーズ機の3台のミラーレス機で、これらをオールドレンズの撮影フォーマットに合わせて使い分けています。レンズの方は一眼レフカメラの全盛期に作られた製品が中心で、M42マウント、ライカMマウント、ライカRマウント、エキザクタマウント、アリフレックスSTマウント、ニコンFマウントなど6種類のマウント規格にわたります。仮にこれら6種のレンズをマウントアダプターを用いて3台のカメラ全てで使用できるようにした場合、図1に示すように必要なアダプターの数は18にもなります。これだけの数のアダプターを揃えるのはかなりの出費ですし、持ち出す機材も大きく重くなります。そして、何よりも大きな問題は、撮影現場でレンズを付け替える際に混乱が発生することです。18もの組み合わせを管理するのは大変なことなのです。混乱を避ける良い方法はないものでしょうか。
図1 従来のシステム:6つのレンズと3つのカメラをつなぐ全組み合わせをアダプター(矢印で表記)で繋いだ概念図
実は良い方法が一つあり、全てのレンズとカメラをライカMマウントに変えてしまうというのが今回ご紹介するアイデアです。手順から話しましょう。
まず初めに3台のカメラ全てにアダプターを装着し、マウント部をライカMマウントに変換します。図2をご覧ください。用意するマウントアダプターはLEICA(M)→SONY E(SE), LEICA(M)→FUJIFILM X(FX), LEICA(M)→OLYMPUS(M4/3)の3種類です。続いてレンズの側にもアダプターを装着し、全てのレンズをライカMマウントに変換します。レンズの1つは初めからライカMマウントなので、残る5本のレンズに対して5個のアダプターを用意すれば十分です。ここまでの準備で用意したアダプターの数はカメラの側が3、レンズの側が5ですから、新システムには合計8個のアダプターが導入されています。アダプターの数を従来のシステムの半数以下に削減できたのです。
図2 新システム:6つのレンズと3つのカメラをライカMマウント経由でつないだ概念図
そうは言っても依然として8個のアダプターを管理するわけで、これで本当に混乱は避けられるのでしょうか。改めて図2で示した新システムを見てみましょう。新システムではライカMマウントをハブにして、6本のレンズと3台のカメラが1点で繋がっています。レンズもカメラも全てライカMマウントになっているので、レンズ交換時にカメラやレンズからアダプターを取り外したり、付け替えたりする必要ないことがわかります。実はこれが狙いだったのです。従来のシステムで発生したレンズ交換時の混乱は新システムでは原理的に発生しません。アダプターの数が減る分だけ機材全体の総重量も軽くなり、同時に機材への出費も軽減されます。このシステムを採用している人同士ならレンズの貸し借りも容易におこなえるはずです。
新システムはカメラやレンズを機種変更する際にも有利です。従来のシステムではレンズの機種変更毎に3個のアダプター、カメラの機種変更毎に6個のアダプターを入れ替える必要が発生しました。これに対し、新システムではそれぞれの機種変更に対して、入れ替えるアダプターは僅か1個で済みます。長期的に見ても運用コストの大幅な低減につながるのです。
運用中の3台のカメラのうち1つが故障した場合、従来のシステムでは特定のレンズが使用不可能になる可能性がありました。しかし、新システムでは全てのレンズを全てのカメラで使用できますので、そのような事態に陥ることはありません。アクシデントにも強いことがわかります。
カメラの側にヘリコイド機能付きの高性能アダプターを当てると、レンズの最短撮影距離が短縮され近接撮影力が向上しますが、新システムではその効果を6本のレンズ全てで享受できます。また、カメラの側にTECHART LM-EA7のようなAFアダプターを当てると、6本のレンズ全てでAF撮影が可能になります。
このようにライカMマウントをハブにするという考え方にはメリットしかありません。ただし、いくつかの注意点に目を向けておきましょう。
まず、レンズとカメラの間に2種類のアダプターを噛ませる場合、アダプターの工作精度が悪いとガタが出ることがあります。この種のガタは画質にも影響を及ぼします。これを回避するため、少なくともカメラの側に高品質なアダプターを使う必要があります。たとえば日本製のrayqualブランドやコシナ製フォクトレンダーブランドのアダプターは作りの良さと高い精度に定評があります。2種類のアダプターを繋いでもガタが出ることは極めて稀です。
イメージサークルの大きい中判レンズや大判レンズを用いる場合にはアダプターの内側で乱反射が発生する場合がありますので、新システムでの運用はオススメできません。内径の大きい1個のアダプター、できれば中大判用の専用アダプターでレンズとカメラをストレートに繋いだほうが画質的に有利です。
追記・・・ ライカMマウントの仕様のためと考えられますが、焦点距離135mmを超えるレンズをフルサイズ機で使用する場合は、レンズによってはケラレが出ることがあるようです。ご注意ください。
カメラの側に装着するアダプターの一例。右はrayqualブランドのライカM-SEアダプター、左はフォクトレンダーブランドのライカM-FXアダプター。いずれも造りの良さと精度の高さに定評のある製品です
新システムではアダプターを用いて個々のレンズをライカMマウントに変換します。左はライツ・ズミクロン 50mm F2(ライカRマウント)にK&FブランドのライカR―ライカMアダプターを装着しています。中央はキノプテック・アポクロマート50mm F2(アリフレックスSTマウント)にHAWK’S FACTORYブランドのアリフレックスST-ライカMアダプターを装着、右はCarl Zeiss Planar 85mm F1.4(コシナ製ニコンFマウント)にrayqualブランドのNikon F―ライカMアダプターを装着しています