2018.07.26

至高の標準レンズ ~Kern Switar 50mm F1.8~

「写真に物語を。」シネマティックフォトグラファーのTakeです。
今回は筆者が深いレンズ沼にはまるきっかけとなったKern Switar 50mm F1.8を紹介していきたい。

スイス製ALPAカメラの標準レンズとしてKern Aarau社が提供したSwitar 50mmは5種類存在するが、大きく分けて3モデルに分類される。初期モデルKern Switar 50mm F1.8が1951年に発売され、その後1958年に28cmまでの近接を可能としたKern Macro Switar 50mm F1.8が、さらに1968年には光学設計やコーティングに改良が加えられた、Kern Macro Switar 50mm F1.9が発売されている。前半2モデルが5群7枚の構成、最後に発売されたモデルは2群目にレンズが追加され5群8枚の構成となっている。Kern社はもともとシネレンズをメインに製造しており、35mmスチルレンズとして発売されたのはこのシリーズのみである。

では、早速描写をみていこう。

Kern Switar 50mm F1.8 + Sony α7ii

Kern Switar 50mm F1.8 + FUJIFILM X-T10

Kern Switar 50mm F1.8 + FUJIFILM X-T10

Kern Switar 50mm F1.8 + Sony α7ii

ピント部はシネレンズ由来の高い解像力が見て取れる、しかし細い線で描かれる描写はフレアを纏いどこまでも繊細である。そのなだらかなボケはまるで望遠レンズのボケをみているかのようであり、そこから描かれるピント部の独特な立体感も特筆に値する。また、高発色・コントラストで描く現代レンズとは真逆をいく描写であり、なだらかな階調で描かれる絵は心地よく長く見ていられる。
なお、当レンズはマクロバージョンではないものの、やはり近距離で最高のパフォーマンスを発揮している。

続いてフィルムでの描写をみていこう。
筆者はKonica FT-1をALPAマウントに改造したものを使用している。若干無限が出ないものの近接描写で使うことの多いSwitar 50mm F1.8ではあまり大きな問題は感じていない。

Kern Switar 50mm F1.8 + Konica FT-1(ALPAマウント改) + Kodak Portra 400

SwitarとPortra 400の相乗効果で相当に柔らかい描写になっているものの、フィルムでも解像力の高さが見て取れる。この辺は好みかもしれないがフィルムはEktarの方が合うかもしれない。

いかがであったろうか。高次元で独自の絵を描き出す当レンズはその評価から高額で取引されているが、それでも一度手に取って欲しいレンズの一つである。