2018.07.02

定番ロシアレンズの最高峰Cine-Jupiter-11 135mm F4 AIRFORCE

オールドレンズ写真家の上野由日路(よしひろ)です。
オールドレンズの魅力は独特な写りとリーズナブルな価格。そして掘り出し物を見つける宝探し感。安くてよく写るレア玉をゲットしたときは次の撮影が楽しくなる。そんな3拍子そろったおすすめ玉をこっそり教えます!

定番だけど人と違うCine-Jupiter-11 135mm F4 AIRFORCE

初回に紹介するのはCine Jupiter-11 135mm F4。ジュピターといえばロシアを代表するレンズでHerios(ヘリオス)と双璧をなす。もちろん玉数も多くいまさら紹介するほどのレンズでもないと思う。しかし、今回紹介するのは空軍仕様のシネカメラ AKS-1用のシネレンズ『シネジュピター11』だ。

外観は通常のジュピターと全く違う。全体的にシンプルな作りで装飾などは一切ない。

工場の刻印はカザン光学器械工場(KOMZ/КАЗАНСКИЙ ОПТИКО-МЕХАНИЧЕСКИЙ ЗАВОД )、最近ではワールドカップの会場としても知られるロシアの都市だ。KOMZではJupiter-11 Jupiter-37のほかに軍需品の生産でも知られる。

マウントはロシアのシネカメラAKS-1用マウントだ。試行錯誤した結果この鏡胴の使用は断念した。写真で付いているマウントはSONY(NEX)マウントだが、後一歩のところで無限遠が出なかった。

オリジナルの鏡胴はカメラ側にストッパーが付いているためレンズ本体の鏡胴のヘリコイドを繰り出していくとそのまま鏡胴からレンズブロックが外れる。

さらに、レンズブロックの前部分の横ネジを外すとレンズロック部分とヘリコイドのネジ部分に分割できる。レンズブロックは元のレンズのサイズに比べてかなり小さいのがわかる。

このコンパクトなレンズブロックをどうにかしてM42ヘリコイドにマウントする方法を探っていたところ、40.5mm-46mmステップアップリングにぴったりはまる事が分かった。それを40.5mm-42mmステップダウン変換してM42ヘリコイドに接続することに成功した。後は無限遠が出ればOK!

無限遠はばっちり!何より開放でこの解像力はすごい!
中心部分を拡大。
SONY α7Rは3640万画素だがこのレンズのポテンシャルはまだ出し切れていない。さらに画素数の高いカメラを使えばこのレンズの限界性能が分かるかもしれない。F4の開放値とはいえゾナータイプでこの解像力のレンズは他に見たことない。

日本でレンズを生産する際には、光学性能がなるべく均一になるように生産して性能が基準に満たないレンズをB級品として排除する。ソ連ではとにかく生産したものを検査にかける。性能によりカテゴリを分けて用途を変える。最高ランクは政府関係や軍需品、あとはカメラの価格や出荷先によって振りわける。今回のCine-Jupiterの描写性能はジュピター11の中でも特にランクの高い個体ゆえの描写といえる。実はこのレンズ通常のジュピター11とさほど価格が変わらない。最高性能のジュピターが普通のジュピターと同じ価格で買える。非常にありがたいかぎりだ。

ジュピター11はゾナー135mmF4のロシアンコピーといわれている。構成図はゾナーのものだが贅沢にガラスを使っている。

寄るとゾナーらしいなだらかなボケ味である。前ボケも後ボケも柔らかい。

ゾナータイプは近接に難があるが、そんな感じは微塵もない。

ポートレートでも硬すぎず柔らかすぎない。フレアも柔らかく美しい。フレアをまとってもシャープネスは落ちない。

開放F4とは思えない写りだ。作例はすべて開放での撮影だか不自由だと思ったことは無かった。

ソビエト連邦の本気レンズは現代でも十分現役だ。