2021.11.16

元祖レトロフォーカスの国産コピー 2:PETRI C.C Auto 35mm F2.8

元祖レトロフォーカスの国産コピー・パート2

PETRI C.C Auto 35mm F2.8(前期型)

世界初のスチルカメラ用レトロフォーカスレンズであるAngenieux TYPE R1を1950年に発売し、広角レンズのパイオニアメーカーとなったフランスのP.Angenieux(アンジェニュー)ですが、後の1960年代には国産メーカー各社がこのType R1を手本とした広角レンズを発売し、パイオニアが切り拓いた道に追従しています。コニカのヘキサノンAR 2.8/35(前期型)や旭光学(ペンタックス)のスーパータクマー 2.3/35、ミランダカメラのソリゴール2.8/35はタイプR1の国産コピーとして知られ、タイプR1の性質を受け継ぎながらも改良された1960年代のコーティングにより一段と鮮やかな発色を実現しています。

今回の記事ではこれまでノーマークだった新たなコピー・アンジェニューとして、東京のペトリカメラが1965年に同社の一眼レフカメラPetri V6の発売とともに市場供給したPETRI C.C Auto 2.8/35(前期型)を取り上げます。オリジナルのType R1は今や8~10万円もする高嶺の花となりつつあるわけですが、このレンズならば状態の良い個体が今はまだ5000円程度から入手できますのでオススメです。さっそくレンズ構成を見てみましょう。

上図の左側がPETRI、右がAngenieux Type R1で、うん確かに同一構成であることが判ります。テッサータイプのマスターレンズを起点に、前群側に凹レンズと凸レンズを1枚づつ加えた5群6枚で、コマ収差の補正に課題を残す古典的なレトロフォーカスタイプです。フレアっぽい描写傾向とシャープで解像感に富む中央部、黎明期の古いコーティングから生み出される軟らかいトーン、鈍く淡白な発色などアンジェニューの性質の何が受け継がれ何が刷新されているのか、以下ではこの辺りに焦点を当て写真撮影の結果をみてみましょう。

F2.8   camera:  SONY A7R2(WB:曇空)

F2.8  SNOY A7R2(WB:日光)

F2.8  SNOY A7R2(WB:曇空)

F2.8  SNOY A7R2(WB:日光)

開放ではピント部を薄い均一なフレア(コマ収差由来のフレア)が覆い、発色も淡泊になりがちです。どこか現実感のない不思議な空気感が漂うところはアンジェニューType R1を彷彿とさせる描写です。ただし、フレア量はアンジェニューよりも少なく、コントラストはより良い印象でコーティング性能の進歩にもよるのでしょうが、逆光でも発色が濁ることはありません。ピント部中央は解像感に富んでおり、キレのある質感表現が可能です。なかなか遊べるレンズではないでしょうか。

PETRIのレンズにはアダプターの市販品が存在しません。私は秋葉原のオールドレンズ専門店2nd baseでPETRI-Leica M特製アダプターを入手し撮影に使用しました。2nd baseのホームページはこちらです。

※本記事はM42 mount spiralという自身のブログに掲載されている記事を新たに加筆・編集したもので、画像は既出のものを使用しています。