素晴らしき「傷レンズ」の世界Vol.1〜Summicronを通して〜
はじめまして。
傷レンズ大好き、伊藤弘です。
オールドレンズの中でも
傷、
クモリ、
カビ、
バルサム切れといった
経年変化によって生み出された
「傷レンズ」は、
想像を超えた写りを魅せてくれます。
傷の度合いにより
一本一本個性豊かに変化していく、
まさにイッテンモノ。
大量生産、均一な写りに飽き飽きした方には
もってこいのレンズだと言えます。
本来であれば、
「ジャンク」や「粗悪品」として
出品されるものが
宝物に変わる
「素晴らしき傷レンズの世界」を
紹介していきます。
超解像レンズに傷。
キズミクロンは完璧なマリアージュ。
今回ご紹介するのは、
王道中の王道、
ライカSummicron/5cm/F2
「空気をも写す超解像レンズ」として
有名なこのレンズ。
ナンバーを調べてみると、1953年製。
父親が8歳の時に生産されたレンズって
どんだけ前やねん!
それだけでもこころが震えます。
前玉には盛大なクモリと傷、
後ろ玉にクモリ。
僕はこのレンズを「キズミクロン」と名付け、
愛用しています。
傷が付いているため、
ソフトフォーカス+滲みが見られますが、
元々は、超解像レンズ、
ピント面はしっかり解像しています。
ピント+空気感を表現できるマリアージュな一本になりました。
写真学校などで教えている時でも、
オールドレンズ初めましての方に
「どんな写真を撮りたいですか?」と聞くと
「フワッとした写りのが良いです!」と言われます。
全体的にはフワッとしたい、
でもピントはしっかり欲しい!
という方にピッタリです。
表現したいのは「空気感」
僕は、オールドレンズ初心者の方に向けて、
写真を教えながら、
音楽活動をしています。
パートは打楽器。
ジャンベというアフリカの太鼓や、
カホンというペルーの箱型打楽器を叩いています。
ライブ中、集中していくと、
叩いた音に乗って、空気を泳ぐ感覚になります。
音を鳴らすことで、
その空気感を表現したくて、ライブ活動を続けています。
写真も同じように、
その場所にある感情や空気感を写したい。
記録するものとしての写真よりも、
表現するものとしての写真が撮れるように。
たとえ、ピントが少し甘かったとしても、
その場の感情や空気感が現わせられる傷レンズを
これからも重宝していきたいです。
ズミクロンのキャッチコピーになっていた
「空気まで写す」という表現を、
傷レンズで追及していきたい。
キズミクロンはそう思わせてくれる
僕の原点のレンズです。