2019.09.14

元祖テックアート?時代の徒花? COSINA AUTO FOCUS LENS 28mm-70mm 3.5-4.8

オールドレンズポートレートフォトグラファーの上野由日路です。今回はCOSINA AUTO FOCUS LENS 28mm-70mm 3.5-4.8という、風変わりなレンズをご紹介します。

現在オールドレンズ界を席巻しているのがどんなオールドレンズも500g以下ならオートフォーカスにしてしまう魔法のアダプターTECHART LM-EA7だ。ソニーのα7シリーズに続き専用アダプターを介してNikon Zシリーズにも対応し始めた。オールドレンズは使いたいがピントはオートフォーカスがいいという要望にこたえたTECHART LM-EA7もファームアップでどんどん精度もスピードも向上している。人が望み、需要があれば技術はどんどん伸びていくのだ。

そんなTECHARTの元祖?とも呼べるレンズがある。マニュアルカメラ全盛期にマニュアルカメラに装着するだけでオートフォーカスカメラになってしまう魔法のレンズだ。なんとオートフォーカスユニットをレンズ側に搭載してレンズ側だけでオートフォーカスをしてしまう。このレンズ機構は当時ちょっとした話題になり各社から発売された。レンズメーカーからだけではなくキャノンやニコンなどのカメラメーカーからも発売された。ちょうど世界初のオートフォーカス一眼レフMINOLTA α-7000が発売された1985年ごろの話である。

今回紹介するCOSINA AUTO FOCUS LENS 28mm-70mm 3.5-4.8は其の翌年1986年に発売された。世界初の市販されたAFカメラはコニカのC35AF、通称「ジャスピンコニカ」で1977年の発売であった。そのためAF技術自体は新しいわけではなく各社が精度とスピードを競っていた時代だ。実際同じような商品も多数発売されていた。このコシナのCOSINA AUTO FOCUS LENS 28mm-70mm 3.5-4.8は28mm-70mmというズーム倍率とマクロ機能そして低価格を両立してかなり販売された。そのおかげでいまだに中古市場で見つけることが出来る。

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この個体は電池ボックスに液漏れがあり接点が腐食していた。接点を再建してあげると動作をしたので運が良かった。フォーカスは決して早くないが思ったよりも正確にピントが合う。α7Rに装着するとなかなかエキセントリックな外観だ!NEXにつけるとなぜか近未来感が漂う。側面にズームレバーがある。電源をOFF/MACROにし、オレンジ色のぽっちを押すことで初めてMACROモードに入れる。ピントあわせは反対側面のボタンを押すことで作動する。早速試写をしてみた。

そつない写りをする。80年代に流行ったコーティングで色を若干派手めな発色にする写りだと感じた。空の写真が28mm側だが周辺が少し崩れる。サッカーボールのオブジェが70mm側だ。ズームレンズのわりには素直ないいボケだ。 マクロ域での写真だ。意外と寄れる。通常モードとマクロモードは撮影距離的な連動はないため1mの最短撮影距離から一気に30cm~50cmくらいの撮影距離になってしまう。ちなみにマクロモードではマニュアルフォーカスのみになる。

使ってみた結果、スナップではかなり使えるレンズだなという印象だった。ポートレートでは過剰な発色演出があだとなり肌の色などが過剰に表現されてしまう。あまりポートレート向きではないようだ。しかし中古市場でも非常に安価であり動作品に出会えれば面白い買い物だと思う。