ジャンクレンズで学ぶ深遠なるオールドレンズ(1)~MINOLTA AUTO ROKKOR-PF 58mm F1.4
モバイル情報ブロガーの伊藤浩一です。スマートフォンなどモバイル機器の情報をブログやWEBメディアで発信しています。その一方、レンズ沼住人として、日々オールドレンズを楽しんでいます。オールドレンズ歴は5年ほどで浅いものの、手元には260本を超えるオールドレンズが集まってしまいました。ただのオールドレンズファンではありますが、コラムを担当させていただきます。
さて、先日、2019年8月14日より新宿高島屋で「新宿クラシックカメラ博」が開催されていました。日本有数のオールドレンズカメラ店が出展する一大イベントです。書物でしか見たことのないような貴重なカメラやレンズが所狭しと、凄い価格で並んでおり、コレクターやオークション業者のみなさんの札束が飛び交うカオスな場所になっています。その一方、人気のイベントとして、週末に開催されるジャンク市があります。保証なしのジャンクレンズが山と積まれて販売されます。あくまでジャンク品なので、購入品はクレームなしの自己責任となります。それでも大勢の方で賑わいます。
実は、私の所有するオールドレンズは、ほぼ全部がジャンクレンズです。中には、中古カメラ店でメンテナンス済のものもありますが、保証なしのジャンク品で、お店のジャンクボックスやオークションで入手したものばかりです。何故、そんなリスクを冒すかと言いますと、第一に価格が安いこと、第二に自分でメンテナンスする覚悟があること、第三に最後の手段として改造して使うこと、とジャンクレンズを楽しんでいます。あまりにリスクが高いので、みなさんにはお勧めできません。
それでもジャンクレンズから学ぶことは多くあります。基本は、欲しいレンズを探すのではなく、その場で面白そうだな、と思ったレンズを入手します。つまり予備知識がありません。入手してから、そのレンズをメンテナンスしながら、レンズが発売された背景を学ぶのです。最新レンズはキレイに撮れるのが当たり前ですが、オールドレンズは、その時代ならではの最新技術と経済的な背景で、レンズスペックが決まっており、必ずしも最高の性能ではありません。また、さらに、ジャンクレンズであれば、レンズの状態で写りに大きな影響があります。その歴史的背景と、レンズの置かれた環境を学ぶことができるのが、ジャンクレンズなのです。
前置きが長くなりましたが、「新宿クラシックカメラ博」で、あるジャンクレンズと出会ってしまいました。MINOLTA AUTO ROKKOR-PF 58mm F1.4です。
MC ROKKORは持っているのですが、MCバージョンが発売される前の初期型になります。この頃のROKKORは、「緑のロッコール」と呼ばれる緑色のコーティングが施されています。写真家の田中長徳さんによりますと、「緑のロッコール」は、1960年代にニューヨークのファッションカメラマンが使っていると言うので大流行したそうです。
ミノルタと言えば、戦後焼野原の中、大阪の工場で生産を続けて、ニコン、キヤノンとは違った独自路線で、数々のカメラを発売したメーカーでした。特にコーティング技術に関しては、一般販売向けで非常に早く市場に導入した技術力を誇っていました。経営に途中苦戦するものの、時代の最先端AF技術を搭載したミノルタα-7000が世界的な大ヒットとなり、市場シェアの半分を超える大金星を挙げます。しかし、日本企業が世界的に進出した時代は、日本企業への風当りも強く、特許訴訟で大きな打撃を受けてしまいます。αブランドは、その後、ソニーに引き継がれていきます。
世界トップまで登りつめたミノルタが、まだ一眼レフカメラで苦労していた時代の1960年代にリリースしたMINOLTA AUTO ROKKOR-PF 58mm F1.4は、この後発売されるMC ROKKORシリーズに比べて、甘い描写になっています。オールドレンズファンなら非常に楽しめる描写を持っています。ジャンクレンズの中でも、低価格のROKKORではありますが、楽しめる描写です。マウントは、MINOLTA MDマウントとなります。近接撮影を楽しむのであれば、MINOLTA MDマウントとLEICA Mマウントの変換アダプター経由で、ライカMマウント対応のヘリコイドアダプターを使うのがお勧めです。
2000円で購入したMINOLTA AUTO ROKKOR-PF 58mm F1.4の甘い描写は、オールドレンズの魅力満載です。開放F1.4では、ピント面はあくまで甘く、周辺ボケも暴れます。私の所有する261本目のオールドレンズとして楽しんでいきたいと思います。