2019.05.16

タイプRXでいこう! 第1回 KERN-Paillard SWITAR 25mm F1.4(Type RX)

オリンパスPENなどのマイクロフォーサーズ機はボケ量が小さいのが泣き所でしたが、もしかしたらボレックス用に各社から供給された補正不足型レンズ(タイプRX)が救世主になるかもしれません。この種のレンズはピント部背後のボケ量が通常のレンズよりも大きく、滲みを伴う上質なボケが得られるのが特徴です。ピント部もフレアを纏う柔らかい描写ですが、柔らかい描写傾向を求める方であればタイプRXを積極的に導入しない手はありません。

良く知られているようにマイクロフォーサーズ機で25mm F1.4のレンズを用いる場合、包括画角はフルサイズ換算で焦点距離50mm相当となり、ボケ量についてもF値換算では2倍のF2.8相当になります。つまり、マイクロフォーサーズ機に25mm F1.4のレンズを搭載して撮影した写真と完全に同一の写真をフルサイズ機で得たいなら、50mm F2.8のレンズを使えばよいということです。ボケ量的にはF1.4~F2換算くらいのレンズに人気が集まりますので、マイクロフォーサーズ機でこのくらいのボケ量を得たいならF0.7~F1程度の超高速レンズが必要になります。とんでもなく高価なうえ重量級レンズになるり、バランス的にもマイクロフォーサーズ機とはつり合いません。

そこで注目したいのがタイプRXのCマウント系レンズです。最もポピュラーな25mm F1.4を用いるならフルサイズ換算では50mm F2.8相当の平凡な標準レンズですが、ボケ量が大きいので感覚的にはF1.8~F2相当(レンズにもよります)の写真が得られます。鏡胴はコンパクトなのでマイクロフォーサーズ機との相性は抜群です。タイプRXはマイクロフォーサーズユーザーの救世主になれるのでしょうか?今回から数回にわたり、そこらあたりを検証してゆこうと思います。登場させるレンズはSwitar 25mm F1.4 RX(今回)に加え、Som Berothiot Cinor 25mm F1.4 RXとSchneider Cine-Xenon 25mm F1.4 RXあたりを検討しています。

さて、第1回はスイスのKERN社が生産したSWITAR 25mm F1.4 RXです。レンズは16mmムービーカメラのBolex H-16 Reflex(1956年発売)と共に登場しました。ケルンといえばライカを凌ぐ高級ブランドでしたので鏡胴のつくりは感心するほど良く、上の写真のように非写界深度のレンジを示したオレンジ色の帯が絞りリングの回転に連動して伸縮する凝った仕掛けになっています。また、この時代としては革新的なインナーフォーカス機構が導入され、後玉の前後移動のみでピントが拾える仕組みになっていました。精密機械工業の盛んなスイスならではの精巧なギミックが魅力で、マニアやコレクターが好んで所有する理由もよくわかります。SwitarのタイプRXには今回紹介する25mm F1.4以外にも10mm F1.6, 16mm F1.8, 50mm F1.4があり、Pizar 25mm F1.5やPizar 50mm F1.8にもRX版が用意されました。レンズの設計は下の図に示すようなプリモプランからの発展型で、ユニークな構成です。

では、さっそく写真作例を見てゆきましょう。

camera: OLYMPUS PEN E-PL6(Aspect Ratio 16:9), lens: Switar 1.4/25 RX @F1.4(開放)

camera: OLYMPUS PEN E-PL6(Aspect Ratio 16:9), lens: Switar 1.4/25 RX @F1.4(開放)

camera: OLYMPUS PEN E-PL6(Aspect Ratio 16:9), lens: Switar 1.4/25 RX @F1.4(開放)

camera: OLYMPUS PEN E-PL6(Aspect Ratio 16:9), lens: Switar 1.4/25 RX @F1.4(開放)

camera: OLYMPUS PEN E-PL6(Aspect Ratio 16:9), lens: Switar 1.4/25 RX @F1.4(開放)

camera: OLYMPUS PEN E-PL6(Aspect Ratio 16:9), lens: Switar 1.4/25 RX @F1.4(開放)

camera: OLYMPUS PEN E-PL6(Aspect Ratio 16:9), lens: Switar 1.4/25 RX @F1.4(開放)

感覚的にはF1.8~F2くらいのボケ量は優に出ていると思います。このレンズの場合は1~2段絞ってもボケ量の変化は小さく、依然として大きな後ろボケが得られています。絞り込んでも画質の変化が少ないレンズだと思います。

※本記事はM42 mount spiralという自身のブログに掲載されている記事を新たに加筆・編集したもので、画像は既出のものを使用しています。