2019.03.18

今買うべきオススメオールドレンズ5選 

オールドレンズポートレート写真家の上野由日路(よしひろ)です。

今回は『今買うべきオススメオールドレンズ5選』と題してオススメのオールドレンズを紹介していきます。巷ではNikonのZ6/Z7やCanon R/RPなど各社のフルサイズミラーレスカメラも出揃いますますミラーレスカメラ一強時代に突入しそうな気配だ。ミラーレスカメラを手にしたらオールドレンズを試してみたいというのは人の性というもの。しかしオールドレンズ人口が増えてもオールドレンズの数は増えることは無い。そこで起きるのは価格の上昇である。ここ数年を見ても全体的にオールドレンズの価格は上昇を続けている。オールドレンズを入手するなら早いに越したことは無いのだ。とはいえどのレンズをセレクトすればいいかわからない方も多いと思う。そこで今回は価格の上昇が必至であるがまだまだ手が届く範囲のレンズを紹介していきたい。

1、Meyer Optik Primoplan 58mm F1.9

独特な描写と設計。オールドレンズの魅力が詰まった1本

中古相場 戦後型1.8万~6万 戦前型8万~15万

Meyer Optik(戦前はMeyer Görlitz)Primoplan 58mm F1.9はドイツを代表する老舗のレンズメーカーで最近人気のTrioplanやライカユーザーにも有名な銘玉Kinoplasmatなどを生産していた。Primoplanは知る人ぞ知る大口径レンズ最初期のレンズだ。その設計は原始的なゾナー型、又はエルノスターの亜種で一般に『プリモプランタイプ』と呼ばれている。他にこの構成を採用しているレンズはごく稀で貴重な存在のレンズである。写りは独特の崩壊していくようなボケと柔らかい色調があいまって絵画のようである。ポートレートや花の撮影には最適なのであるがスナップなどの撮影には不向きで長く駄目玉と揶揄されてきた。玉数はやや少なめだが綺麗な個体は大変貴重である。写真のレンズは戦前型で真鍮鏡胴で5.8cmF1.9という表記がされている。戦前の個体はかなり少なく価格もかなり高い。独特な描写をするレンズなので他のレンズで代用することが出ない。現在はまだ買える範囲の価格なので見つけたら買っておいたほうが良いレンズだ。

幻想的な描写が魅力

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2、Kern MacroSwitar 50mm F1.8 

最高の標準レンズの呼び声高いレンズ。最高級レンズの証「アポクロマート」

中古価格 11万~20万円

かつてALPAという35mm判1眼レフがあった。世界中のから集められた銘玉が自由に使える夢のカメラだったが価格はライカをはるかに超え、普通に所有することは困難だった。そのALPAの数ある標準レンズのうち最高峰といわれていたのがこのマクロスイターだ。スイスのケルンアーラウ社がALPAの為だけに設計、生産していたのがこのレンズになる。このレンズシリーズ以外のスイターはすべてシネ用のレンズになる。生産本数はシリーズで2万本強。50mmF1.8だけだと1万本前後になる。1969年に生産が終了しているので50年前のレンズになる。綺麗な現存個体はかなり少ないといえる。この希少なレンズの写りはどんなものであろうか?近接から非常にシャープであるが背景はとろけるように柔らかい。その秘密はこのレンズの独特なレンズ構成にある。ガウス型を基本としているのであるが第3群が凹レンズの貼り合わせになっている。同じくガウスタイプのウルトロンの変形ともいえなくはないがこのレンズ構成を採用しているレンズは他に見当たらない。写りも独特で前ボケが硬く後ボケが柔らかい描写をする。通常このバランスはソフトレンズに採用されているバランスであるがスイターではピント部はくっきりとシャープである。背景の独特な柔らかさはソフトフォーカスレンズの後ボケと共通するものである。ちなみにこのレンズはアポクロマートであるといわれている。世の中のほとんどのレンズが単色光もしくは2色光の光路計算により設計されているが、アポクロマートでは光の3色(赤、青、黄)の光路計算のもとレンズを設計している。もちろん設計も生産も飛躍的に大変となりレンズ単価は高騰する。アポクロマートは望遠や特殊用途用のレンズ設計で用いられることはあるが標準レンズで用いられることはかなり稀である。最近ではライカ社よりアポズミクロンが発売されて話題となったが大量生産が困難で価格は非常に高価になる。

雰囲気がたまらないレンズだ

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3、Schneider Kreuznach Arriflex Cine Xenon 50mm F2

シネレンズの最高峰Arriflexマウントのオーソドックスな標準レンズ

中古相場 3万円~10万円

Arriflexといえばアーノルド&リヒター社のムービーカメラで現在でもハリウッドをはじめとする世界中の撮影所で活躍している。シュナイダークロイツナッハ社はArriflexに交換レンズを供給していた。今回オススメするCine-XenonもArriflexマウントのものだ。Arriflexといえば16mmフィルムフォーマットのものと35mmフィルムフォーマットのものがあるがこのレンズはどちらにも対応する。ムービーの35mmフォーマットとはスチールカメラではハーフサイズに当たる。当然イメージサークルはスチールのフルサイズより小さくなるがフルサイズでもケラレは無い。ごく当たり前のことに思えるが、ケラレの無い50mmのシネレンズは貴重でそれゆえに高価である。このレンズが手頃な価格なのは、まず本数があることとメーカーの知名度がいまいちであることに由来する。本数がある理由は簡単でArriマウントの他社のレンズが桁違いに高価であったからだ。CookeやZeiss,Taylor&Hobson,Rodenstock、Kinoptik,Angenieux,SomBerthiot,Kilfitなど当時考えうる最高のレンズメーカーのレンズがラインナップされているがシュナイダー以外のレンズは倍以上の価格が付いていた。AngenieuxなどにいたってはArriflexの本体と同等程度の価格だったそうだ。それゆえ必然的にシュナイダーのレンズが選ばれたようだ。本数が多い理由はそこにある。ではシュナイダーレンズは2流なのかといえばそんなことはない。確かに一般向けの普及機に多くレンズを供給している印象が特に日本国内ではあるが、同時にプロフェッショナル向けにもレンズを供給している。生産本数だけを見ればドイツ最大級のレンズメーカーなのだ。現行レンズで言えばフェーズワン用の1億画素対応レンズもシュナイダー製だ。当然シネクセノンの写りもその他のレンズに引けをとらない。ただでさえArriマウントのレンズが高騰している昨今、価格がまだ安定しているCine-Xenonは間違いなく買いのレンズといる。

 

この個体はやや年代の古い個体である。逆光でフレアを生じるが解像力が損なわれることはない。やや淡めであるがしっかりした描写をする。年代の新しい個体を手に入れればもっとこってりとした写りを楽しめる。

4、Fujifilm Fujinon(X-Fujinon)55mm F2.2

オールドレンズの魅力を凝縮した大本命レンズ!

中古相場 3000円~16000円

このレンズはかつて数百円でも買い手が付かないほどの不人気レンズであった。しかし最近になってレンズ構成が独特なことと写りが非常に個性的なことがわかり人気に火が付いた。昔では『汚いボケ』といわれて敬遠された硬い2線ボケ系のざわざわとしたボケも近年では絵画的であるという再評価を受けるようになった。背景が硬いゆえバブルに近い丸ボケが出ることもトレンドに合致した。M42マウントが人気であるがたいていの場合ボディーの樹脂が経年劣化でひび割れている。ヘリコイドとピントリングの接続部分も貧弱なのでM42マウントのレンズを買う際は注意が必要だ。このレンズは後にXマウントでも作られている。現状このXマウントのもののほうが造りがよく経年劣化が少ない。ただマウントがマイナーになるのでマウントアダプターで苦労する。このレンズの独特な構成も他には見られないので個体数が少なくなるにつれて価格は上昇すると思われる。ザワザワボケ、バブルボケ、虹ゴーストなどオールドレンズのいいとこ取りなレンズなので入手しておいて損はない。

画面が一気にカラフルになる そんなにぎやかなレンズだ

 

 

5、KMZ PO3-3M 50mm F2

ロシアの本気シネレンズ

中古相場30000円~60000円

旧ソビエト連邦時代に活躍したシネレンズ。情報がまったく無かったため長く謎のレンズとされてきたが最近ではクックスピードパンクロを模して設計されたらしいことがわかってきた。その後のバージョンアップで完全なコピーとはいえない設計になったが写りの傾向はかなり似ている。シネレンズらしい重厚な描写が特徴で非常に上質な画が得られる。フルサイズ使用時に四隅にケラレが発生してしまうのが弱点だがポートレートなどで使用すればそれも味となる。前述のクックスピードパンクロなどに比べ1/5~1/10の価格で入手できるのは非常にありがたい。しかしたまたま現在のところデットストックのレンズヘッドが豊富に存在するのでこの値段であるが、それもいつまで続くかわからない。埋蔵量が少なくなった時点での値上がりは必至のレンズといえる。写りは濃厚で骨太な印象だ。中心解像力も高くポートレートにもスナップにも向いている。このレンズオリジナルはOCT-18やKonvasといった特殊マウントであるがロシア国内や国内のレンズ業者がライカLマウントレンズに改造して販売しているのでそれを購入することをオススメする。ちなみにキリル文字のPはアルファベットのRに当たるので厳密な正式名称はRO3-3Mである。

自然色で撮っても肌の質感を美しく再現してくれる 色を転ばせても安定した画質をみせる 設計に余裕がある証拠だ

 

これら5本のレンズはこれからオールドレンズ人気の高まりと共にさらに入手困難になることが予想される。まだ手に入る今のうちに入手することをお勧めしたいレンズだ!

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